2016.7.12
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[プチ連載です]
Legacy8080用オプションボードの製作

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葛Z術少年出版様からLegacy8080用のオプションボード製作の依頼を受けました。
そのボードには電流制限素子(ポリスイッチ)をつけることになりました。
そこで…。
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[第7回]


●トランジスタ電流制限回路(4)

トランジスタ電流制限回路の出力電圧の電圧降下は、回路に直列に入れた抵抗(前回の回路では4.7Ω)によるだけではなくて、出力トランジスタのエミッタコレクタ間の電圧降下も加わっています。
しかしそれは後で気がついたことで、当初は抵抗の電圧降下のみと思い込んでいましたので、なんとかしてそれを小さくできないだろうかと考えました。
しかしこれはちょっと考えると無理なように思えます。
そもそもなぜそこに抵抗を入れるかといいますと、そこを流れる電流が増大して、逆さにぶらさがったトランジスタのエミッタベース間電圧が約0.6Vになることによって、そのトランジスタがONになって、出力トランジスタをOFFにするのですから、するとそのための約0.6Vはどうしてもこれは必須の条件のように思えます。

あかん。
無理や。
やれやれ、忙しいのにあたら貴重な時間を無駄に使ってしもうたわ。
これではブログネタにもなりませんわいな。

しかし。しかし。
そのときひらめいたのでありますよ。
確かに、トランジスタをONさせるために0.6Vの電圧は必要。
しかし、なんとかして、もっと小さい電圧を大きくして、結果0.6Vにすることができたなら…。
おお。
電圧増幅回路!
おお。
OPアンプ!!

が、しかし、もともとの回路は抵抗が+側に入っています。
そこに増幅回路を組むのはちょっと難しいのでは…。
しかしせっかくOPアンプを思いついたのに、このまま諦めてしまうのは余りに惜しいと、例によってウェブをさまよっていましたら、ヒントがみつかりました。
そうか。
抵抗をGND側に入れればいいんだ。
もっともそうすると、GNDが浮き上がることになりますが、もともとOPアンプを思いついた目的は、抵抗による電圧降下を減少させるためだったのですから、少しの浮き上がりで抑えられるのでしたらノープロブレムでありましょう。

ということでこんな回路を考えました。

当初のトランジスタ2石の簡単な回路から、ずいぶん複雑な回路になってしまいました。
でも回路の動作は単純です。
初期状態ではA1015とその下のC1815はONで、VOUTとGNDとの間に負荷をつなぐと回路に電流が流れます。
4.7Ωを並列につないでいるのは、ほかに適当な抵抗の手持ちがなかったのと、単純に前回までの回路に比べて電圧降下が1/4になることの視覚効果を考えてのことです。
しかし実際のところ、この回路ではここの抵抗値は余り重要ではありません。
重要なのはOPアンプの増幅率です。
OPアンプの回路は教科書のまんまの非反転増幅回路です。
とりあえず分圧抵抗も手持ちの適当なものを選びました。
このときLM358の出力電圧は+入力の(1+22/11)倍、つまり3倍になります。

LM358の出力が0.6Vになるとその出力につながる2個のC1815がONになります。
右下のC1815はオーバーロードであることを示すLEDを点灯させるためのもので回路としては必須のものではありません。
上側のC1815がONになるとその左側のC1815がOFFになり、そのためA1015もOFFになります。

LM358の出力が0.6Vのとき、4.7Ω×4(≒1.2Ω)の両端の電圧は0.2Vのはずです。
そのとき回路には
0.2/1.2≒0.167A
の電流が流れている計算です。

実際の回路です。

回路に51Ωの負荷抵抗をつないで、そのときの電圧と電流を測りました。
電流計は90mAぐらいを示しています。
出力電圧は4.65Vです。
前回の回路ではこのくらいの電流値のときに出力電圧は4.27Vでしたから、かなり電圧降下が改善されていることがわかります。
この電圧は51Ωの両端の電圧です。

ジャノ目基板部分の拡大写真です。

ここにくるまでに試行錯誤をしたため余計な回路がついています。

当記事をお読みになったユーザー様からメールでお問い合わせをいただきました。

ブレッドボードを使えばハンダ付けする必要もなくて簡単なのに、どうして使わないのですか?
何か特別の理由でもあるのですか?

特別の理由などありません。
強いて言えば慣れと好みの問題です。
もう30年以上、ほとんど毎日のようにハンダゴテを握ってきました。
この程度の回路ならば、ブレッドボードにパーツを並べるよりもジャノ目基板にハンダ付けを選んでしまいます。
最初ブレッドボードを試したときには、それなりに便利かと思ったのですけれど、やっぱり慣れでしょうねえ。
私にはジャノ目基板のほうが向いているようです。

負荷抵抗を33Ωにしてみました。

130mAほど流れています。
出力電圧は4.35Vに低下しました。
これはちょっとおかしいのではないか、電圧降下が大きすぎるのでは?と思ったことが前回のトランジスタの電圧降下に気が付くきっかけになりました。
4.35/33≒0.132A
ですから電圧と電流の値は合っています。

思い切って出力をショートさせてみました。

電流値は130mAほどで止まっています。
オーバーロードを示すLEDが点灯しています。
このときOPアンプ周りはどうなっているのでしょうか?
まずは計算で確かめてみます。
4.7Ω×4(≒1.2Ω)のところに130mA流れていますから、1.2Ωの両端の電圧は
0.13×1.2=0.156V
です。
これがLM358の+入力になりますから、このときLM358の出力電圧は
0.156×3=0.468V
うーん。
チト低いようですなあ。

実際に測ってみました。
LM358の+入力は163mV、−入力は194mVでした。
教科書では、ここは一致するはず、と思ったのですが…。
ちょっと差が出ていますねえ。
これが誤差につながっているようです。
それでLM358の出力は、0.531Vでした。
0.6Vより低い値です。

それはともかく、電流制限回路が機能しているときの抵抗(1.2Ω)による電圧降下はわずか163mVですから、この部分に注目する限りにおいては、今回の回路はそれなりに改善された回路だということになります。

問題はトランジスタによる電圧降下です。

Legacy8080用オプションボードの製作[第7回]
2016.7.12upload

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