2016.12.15

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KL5C80A12マイコンボードの製作

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KL5C80A12はZ80互換の高速高性能8ビットマイクロコントローラです。
残念なことに数年前に生産中止になってしまいました。
しかし当社ではKL5C80A12を使った組込みマイコンボードはまだ健在です。
そのKL5C80A12を使ったND80Z3.5上位互換マイコンボードの製作記事です。
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[第1回]


●プロローグ

KL5C80A12はかって川崎製鉄が製造販売していたZ80互換の高速高性能LSIです。
Z80互換CPUにクロックオシレータ、パラレルポート、シリアルインターフェース、タイマーカウンタ、MMU(メモリマネージメントユニット)をあわせて100pinのパッケージに組み込んだワンチップマイクロコントローラです。
CPUクロックは10MHzですが、Z80よりも少ないクロックで命令を実行できるので、実質的には20〜30MHz相当の高速動作CPUであるといえます。
またMMUを内蔵しているため外部回路なしに512KBのメモリ空間を(バンク切換えによって)アクセス可能です(Z80が直接アクセスできるメモリ空間は64KBで、それはKL5C80A12でも同じです)。

当社でもその高性能に魅力を感じ、Z80をKL5C80A12に置き換えたボードを何種類も開発し製造販売しました。
メインはKL5C80A12を使った組込制御用マイコンボード(ZBKシリーズ)ですが、マイコントレーニングボードもND80Kという名前で販売しました(ND80ZUの後継機種という位置づけでした)。
ただしND80ZUは組立キットでしたが、KL5C80A12は100pinの面実装LSIなので組立キットとすることはできずに、完成品のみでの扱いしかできませんでした。

KL5C80A12は高性能ではありましたが、Z80と違って川崎製鉄1社の製造販売でしたので、大丈夫かなあという心配はありました。
後年その心配は見事に的中して、ついに数年前に生産中止になってしまいました。
その情報は実際に生産中止になる前に代理店から聞いていましたので、ラストオーダーとして数年分の在庫を仕入れましたが、先年とうとう使い切ってしまいました。
まだZBKシリーズを使っていただいているお客様がいらっしゃいますので、ご迷惑をおかけするわけにはいきません。
現在は流通市場から仕入れてZBK制御ボードの製造販売を続けています。
それもいずれなくなってしまうとは思いますが、当社程度の小規模な生産でしたらまだ当分はなんとかなりそうです。

ただND80KのほうはKL5C80A12の生産終了とは別の理由もあって数年前に販売を終了しました。
実はプログラム、データをSAVE/LOADするための媒体としてカセットテープレコーダを使う回路になっていたのですが、さすがに余りに旧式で、もうその時代ではなくなってしまいました。
TK−80互換の時代でもなくなっていましたので、販売中止ということにしました。
その後もときおりND80Kについての問い合わせをいただくことはありましたが、カセットテープレコーダインターフェースではいまどき無理ですということでお断りしてきました。

そういう時代になってしまったのでしたが。
皆様ご存知の通りのいきさつで、かってのTK−80互換Z80マイコンボードND80ZUの後継機種としてND80ZV組立キットを作ってしまいました。
さらにはCP/M互換DOSシステムというビッグなオプションまでが誕生しました。
ND80ZVを開発した当初はCP/M互換DOSシステムなどどいうことは考えてもいませんでしたので、ND80ZVでCP/M互換システムを走らせるためには、メモリ回路を増設する必要がありました。
その後にはND80ZVを一部改良してCP/M互換DOS用の増設メモリ回路をオプションとして内蔵したND80Z3.5組立キットを発売し、おかげさまで好評をいただき今でも販売を継続しています。
さらには今年2016年春にはTK−80互換の8080マイコンボードND8080組立キットを発売開始しました。
こちらのほうははるか昔に生産中止になったLSIを組み合わせて使うために、入手できる間だけの限定販売ですが、できるだけ供給を続けたいと思い、必要なLSIを少しですが在庫して、いまのところ販売を継続中です。

そういう流れの中で、なんとかND80Kも復活させたいという思いはありました。
しかしそのためには越えなければならない壁がありました。
組立キットをどうする?
という問題です。

KL5C80A12はZ80や8080と違って、100pinの面実装LSIです。
これはよほどハンダ付けに熟練した方でなければちょっと難しいでしょう。
かといってND80Kのように完成品では面白くありません。
そこをクリアするためにあれこれ方法を考えてはいたのですが、なかなか考えがまとまらず、実現できずにおりました。

もうひとつの課題もありました。
上でも書きましたように、KL5C80A12はCPUコアはZ80互換なので直接アクセスできるメモリ空間は64KBなのですが、内蔵のMMUによって外部に512KBまでの実メモリを搭載して、それをバンク切換えによってアクセスすることができます。
TK−80互換というところはそのまま残したいと思いますからROMは搭載しますが、27C256を越えるサイズも搭載可能です。
ROMについては27C1001での対応も可能です。
それならZB3BASICの機能を拡張したZBKV3BASICも搭載できます。
しかしRAMはどうか?
こちらはちょっと心もとない状況です。
ほとんどが大容量のDRAMに移行してしまって、しかも全てが面実装チップです。
ND80Z3.5やND8080では62256を2個実装するだけでCP/M用のフルRAM構成にすることができますが、KL5C80A12マイコンの場合フルRAMとするにはその8倍の512KBが必要です。
こちらのほうはとりあえず628128〜628512を流通市場からかき集めてなんとかしようと考えました。

まだ問題はありました。
さすがに8080の資料は入手が難しくなってきています。
でもまだ古いドキュメントがインターネットから入手できます。
Z80についてはまだZilogのサイトから入手できます。
ところがKL5C80A12は、そこのところが全くだめなのです。
どういう方針なのか、何か事情があったのかわかりませんが、生産中止後川崎製鉄のダウンロードサイトは閉鎖されてしまい、ドキュメントが全く入手不能になってしまいました。
ネット上で検索しても詳細なドキュメントは入手できないようです。
信じられない状況です。
幸い手元には、かって川崎製鉄のダウンロードサイトからダウンロードしてプリントアウトしたハードウェアマニュアルとアプリケーションマニュアルが残っています。

もうかなりぼろぼろになってあちこち書き込みがありますが、いまや貴重品です。

ND80Kにも付属のハードウェア説明書でKL5C80A12の機能についてざっと説明をしていますが、「詳しくはKL5C80A12のハードウェアマニュアルを参照してください」ということで逃げています。
そこのところを大幅に加筆しなければなりません。
これは相当の大仕事です。
いわばKL5C80A12の復活大作戦です。

こちらが以前販売しておりましたND80K(完成品)です。


もうホームページから外してしまったと思っていたのですが、こちらに製品説明が残っていました。

KL5C80A12マイコンボードの製作[第1回]
2016.12.15upload


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