標準TTLだけ(!)でCPUをつくろう!(組立てキットです!)
(ホントは74HC、CMOSなんだけど…)
[第206回]

●作業の進捗状況の報告です

長々と回路の説明を続けている裏で、せっせと基板配線図(アートワーク図)の変更作業を進めておりました。
まだ完了はしていませんが、やっと一段落つくところまできましたので、その近況報告です。

回路の変更や修正もいっぱい出てきてしまいましたので、その配線の変更作業も大変だったのですけれど、実はそれよりももっともっと大変なことがあったのです。
まあ、ほんとに、よせばよいのに、次々と考えなくてもよいことを思いつくものですから、毎度毎度、自分で自分の首をしめてばかりで、もう窒息寸前、ご臨終の1歩手前の状態です。
修正作業にとりかかる前から、その困難なことがわかりすぎるほどはっきりしていましたから、実際に着手するまでというもの、数日間、図面を見ながらため息をついてばかりいました。

何回も書いていますように、この「つくるCPU」は組立キットのつもりです。
でも、そんじょそこらの組立キットとは、桁が違います。
なんたってICが300個です。

それをいきなり全部一気に組み立ててしまうかぁ?
ごじょーだんでしょーよ。
それは、もう、人間のやることではありません。

たとえば、子供のころのプラモデル。あー、私のころは、まだプラモデルはほんの出だしのころで、模型と言えば、木製がほとんどでした。
木製だって、戦艦大和などになると、部品点数も結構多くて、なかなか一度に完成させることはできません。
なんたってお年玉も使わないでため込んで、なけなしの大枚をはたいてやっとのことで手に入れたんですから、そんな、一晩やそこらで作ってしまったんじゃあ、もったいなくってたまりません。
主砲ひとつ作っては、それをあっちへ向けたりこっちへ回したり、「ずどーん、どかーん」なんて、ひとしきり遊んでから、また次の組み立てにとりかかる、なんて、大体がそんな調子でしたよね。

そうすると、多分、最も人間的なのは、やっぱり命令回路の機能ごとに少しずつ組み立てながら、途中で電源を入れて、LEDが点灯するさまをためつながめつじっくりとご鑑賞なさり、「おお、うおお、おう」などと奇声を発していただきつつ、作業していただくのがよろしいのでは、と思います。

ところが、これもどこか最初のころに書いたはずなのですが、CMOSの回路は、そういうわけにはいかないのです。
TTLは構わないのですけれど、CMOSは入力インピーダンスが極めて高いため、入力端子をオープン(未接続)のままにしておくことができません。

どういうことかといいますと、とりあえず回路の一部だけICを実装したとして、それが中間の回路だとすると、その前段の回路が実装されていないのですから、当然入力の一部が未接続の状態になってしまいます。
その状態で、電源を入れたりすると、最悪の場合、ICが熱暴走して、焼損してしまいます。そこまではいかなくても、回路がまともに動いてくれません。あちこちのLEDがそれこそ狂ったように、ちらちらしたり、ぼうっと光ったりします。

それなら、回路の先端部分から順に実装していけばいいじゃないの?

そうなのですけれど、大抵のICは、たとえばゲートICなどでは1つのICに4ゲートとか6ゲートとか、複数の回路が入っています。すると中には全部使い切れなくて、半端のまま残ってしまうゲートが出てきてしまいます。
なにしろ、ICは1個でも減らしたいわけですから、可能な限り、多少無理してうんと遠くまで線を引っ張ってでも使いたい、わけです。
中には、1個の74HC04(インバータ6ゲート)を4つも5つもの異なる命令回路で使っている、などというところも出てきます。
すると、そのうちのひとつの回路を実装しても、その74HC04につながっている別の回路はまだ実装されていなくて、そこのところの74HC04のゲートの入力がオープンになってしまう、ということになります。
そういうことになりますと、一部の回路を実装した状態では、電源を入れて、その部分だけの動作を確認してみる、なんてことができなくなってしまいます。

どうするか?
そのときオープンになってしまう、と考えられるゲートなどの入力端子に、100KΩ程度のダミー抵抗をつけて、あとで全部のICを実装したときに、その抵抗が邪魔をしない向きに、ロジックを考えて、VccかGNDにつなぐようにと、考えたのです。

今まで説明を進めてきた、回路ごとに少しずつICを実装しながらの作業は、そのことを想定しての作業だったのです。
プリンタで出力したレイアウト図のICに、作業ごとにサインペンで色分けしながら、作業毎にその時点で、未接続になるICの入力端子を確認して、そこに100KΩの抵抗を追加していくという作業です。
こーんな感じです。



試作基板では、当然のことながら、基板のウラのICの入力端子に直に抵抗をハンダ付けしました。
その抵抗を、全部、隙間につめこまなくてはなりません。

そりゃぁ、とても、無理だわ(ためいき)。

この抵抗は、途中の過程で、いわば派生的に、必要悪として、一時的に、必要になるものでして、あ、したがいまして、その、ご面倒でも、お客様ご自身で、基板のウラ側の、しかるべきICの、あ、しかるべき、入力端子に、その、直に、ハンダ付けを、お願いできましたらと、かように、ココロエマシタしだいで…。あ、それもまた、組み立てキットならではの楽しみかと…。

うー、いやぁ、それは、ない。
ここまでやってきて、そーいう説明文は、書きたくない。
そーいう、考え方は、堕落だ。日和見主義だ。初志貫徹。うちてしやまむ。

やっぱり、やるしか、ないか…。
そこまで、カクゴするのに、数日。ためいき。でした。

そんなわけで、やっと覚悟が決まってからは、さて、どうやって回路の変更作業をすすめるか、の思案です。
抵抗の追加もおおごとですけれど、配線の変更作業も半端じゃありません。
一番確実なのは、試作基板の変更部分を確認しながら、作業することです。
ですけれど、なんたって、30cm×50cmの基板ですよぉ。
それを、表にしたり、裏にしたりしながらの作業なんて…。なんだか熱が出てきてしまいそう…。

で、一計を案じました、よ。
試作基板の表と裏をそのまんま、例のスキャナでスキャンして、それをA3プリンタでプリントアウトして。
といったって各1枚ではおさまりません。
約倍寸、A3をそれぞれ4枚貼り合わせて、巨大実物写真を用意しました。

基板の表の写真です。


そしてこれが基板の裏の写真です。


この写真を見ながら、追加配線、パターンカット、抵抗の追加、などを1箇所ずつ、実際のアートワーク図に反映させて、変更作業をしていきました。
作業を終えたところは、その印として、蛍光ペンで着色をしました。

いやあ、為せば成る、ですねえ。
無理だと、思っていたのですけれど、なんとか、無理無理で、収まってしまいました。
2009.4.17upload

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