2013.2.17
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復活!CP/M ワンボードマイコンでCP/Mを!
CP/MがTK−80互換のワンボードマイコンの上で復活します
ND80ZVとMYCPU80の上でCP/Mが走ります

[第321回]


●SL1960

ひと月ほど前のことになりますが、Y様からZ8S180が1個送られてきました。
「ネットでZ8S180の価格を調べていたら”Z8S18020VSG SL1960”という価格が安いタイプを見つけました。サンプルとして1個購入しました。これが使えるものかどうか、お手すきのときにでも確認願います」
とのことでした。

SL1960?
一体何でしょう?

見たところ”SL1960”と刻印されていることを除けば普通のタイプと変わるところはないようなのですが。
ちょいと謎でありました。



下は普通のZ8S18020です。



ネットで検索しても、なかなかヒットしませんでしたが、やっとZilogのサイトにドキュメントがあることがわかりました。



この文書によりますと、1997年にZ8S180の大幅なバージョンアップが行なわれたらしいのですが。
ところがその結果、従来品の回路によっては、うまく動作しない事例が出てきたらしいのですね。

それは有りうることでありまして、改良とかバージョンアップをしたら、性能がよくなるのだから前のバージョンで動いていたのなら、なおゆとりがでてきてよいのでは、などと考えがちですけれど、ことはそんなに単純ではないのです。
たとえば10MHz版のCPUが動いていた回路に同じシリーズの20MHz版を実装して、それを10MHzで動作させる分には問題はないだろうと思いますとそれは間違いでありまして、それなりのリスクを伴います。
なぜかといいますと、高速化されたCPUはより高速のメモリをアクセスする設計になっているはずですから、アクセス信号のタイミングや立下り、立ち上がりがより高速化されています。
当然それに見合う速さの周辺回路を用意しないことには、いくらクロックだけを合わせてみても、間に合わないことがでてきます。
そうそう。
[第313回]で説明しました82C55A−2のアドレスセットアップタイムなどもその例ですね。

ともかくそういう理由から、バージョンアップ前の、いわば古い規格のZ8S180も、新しいバージョンのZ8S180と並行して供給することにしたのだそうでありますね。
それがSL1960バージョンです。
メーカーもなかなかに大変なことですね。

前回お話をいたしました、内部クロックを外部クロックの2倍にできるという機能も、このときにバージョンアップされたもののようです。
そのほかにも、従来は低速であったUARTのボーレートジェネレータに16ビットのカウンタが使えるようになり、その結果CPUクロックが33MHzでは512Kbpsまでの高速通信が可能になったとのことです。

ここで注意すべきは、同じZ8S180であっても、SL1960の刻印があるCPUは、上に説明いたしました経緯から生産されることになった旧バージョン品でありますから、新たにバージョンアップされた機能が使えないという点です。
実際にSL1960品をE−80(仮称)ミニコン試作基板に実装して確認してみましたが、SL1960では前回説明をいたしました、内蔵I/Oレジスタ1EH、1FHによるCPUクロック周波数の設定は全く無視されてしまいました。
SL1960は、CPUクロックが20MHzと高速化されていることを除けば、機能的にはHD64180と変わらないCPUである、と考えたほうがよいと思います。

単にHD64180と同じ動作をすればよいとお考えでしたらよろしいのですが、もし新たに追加された機能も使いたいとお考えでしたら、購入にあたってはSL1960バージョンをうっかり購入してしまうことのないよう、十分注意する必要があると思います。

ワンボードマイコンでCP/Mを![第321回]
2013.2.17upload

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